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ウズベキスタン一人旅⑥タシュケントからウルゲンチ、ヒヴァの街へバックパッカー魂を燃やしながら公共交通機関だけで移動する

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ウズベキスタン一人旅⑥タシュケントからウルゲンチ、ヒヴァの街へバックパッカー魂を燃やしながら公共交通機関だけで移動する

朝早く起きて、タシュケントのホテルをチェックアウトする。これ、わたしにはよくあるパターンで、疲れているのに眠れないんだよな…。たぶん「寝過ごしたらどうしよう」という意識が強すぎて、ちょっとした物音にも目が覚めちゃう。昔はもっと焦っていたけれど、最近は「横になっているだけでも身体は休まってるって信じよう」と思うことにしてる。飛行機の中でも寝られるしね。

朝5時だいのタシュケントの道はさすがにガラガラ。もともと流しのタクシーはあまり走っていないらしいので、配車アプリ『Yandex Go』でタクシーを手配した。もし捕まらなかったらホテルのフロントに頼もうと思っていたけど、あっさり1分で捕まった。どこへ行くにも配車アプリが欠かせない時代だなあと実感する。もちろんアプリを使うにはSIMカードや電話番号が必要だったりするんだけど、そこは抜かりなく準備してきた。

ホテルのすこし先に、昨夜から気になっていたキラキラ光るやたら派手なビルがあったので、タクシーの運転手ドニーに「あれってホテル?」と聞いてみた。そしたらまさかの「ビジネスセンター(オフィスビル)」という答え。あんなに光り輝いてるのに?と驚きながら笑ってしまった。

こういう、話しかけてくれる運転手さんに当たるとラッキーだと思う。いろんなことを聞けるチャンスだし、ちょっとした質問をできるし、地元の空気を少しでも感じられる。昨夜空港からホテルに乗ったタクシーの運転手さんは英語が通じなくて、翻訳アプリを使いながらなんとかやりとりしたけど、申し訳ない気持ちにもなった。

ドニーは「アプリの目的地がインターナショナルターミナルじゃないけど大丈夫?」と聞いてくれた。わたしは「大丈夫!これから国内線でヒヴァに行くんだ」と答えると、「なるほどね!ヒヴァはめちゃくちゃきれいだよ。それにサマルカンドも行くんでしょ?」と嬉しそうに話してくれた。「うん、行く行く!ヒヴァ、ブハラ、サマルカンド、そしたらまたタシュケントに戻るよ」と答えた。

ドニーは「あっ、見て!あそこがプロフセンター!」と指差した。大釜でプロフを作るレストランだ。そんな観光情報まで教えてくれるなんてありがたい。ホスピタリティを感じた。

ドニーはウズベク語、ロシア語、英語を話す。わたしが日本人だと知ると、「Tokyoは大きくて美しい街。ビジネスセンターもたくさんあって、いつかいくのが僕の夢」と言ってくれた。なんだか嬉しくなった。ぜひいつか日本に来てほしい。

今回、言葉の壁がかなり高いことは事前にわかっていたので、わたしなりに小さな秘策を用意してきた。日本から持ってきたのは、ウズベク語とロシア語で「ウズベク語が話せなくてごめん〜!日本から来ました。こんにちは。ホスピタリティありがとう」的なメッセージを書いたカードと、日本の飴を入れた小さなポチ袋。大阪のおばちゃん感満載だけど、これがあると気持ちが伝わる気がして。ドニーにも手渡すと、「ありがとう!これなに?」と興味津々。日本のキャンディだよと伝えると、ドニーは「じゃあこれ!」とウズベクの飴をくれた。まさかの飴ちゃん返しに思わず笑ってしまった。そういえば、昨夜チェックインしたホテルのフロントマンにも渡したとき、チョコレート菓子をもらったっけ。たまたまかもしれないけど、すごくホスピタリティを感じたし、歓迎されている気がしてあたたかい気持ちになった。

タシュケント空港の国内線ターミナルはとても簡素な作りだった。全体的に漂う、かすかなロシア感。まあロシアに行ったことはないんだけど、なんとなくそんな気がする。空港内のコーヒースタンドでコーヒーを頼んだら、「砂糖いる?」と聞かれて即答で「ノーシュガー!」と答えたのに、なぜか甘いコーヒーが出てきた。これ、海外あるあるだよなあ。じゃあ、なぜ聞いたんだよ、と突っ込みたくなる。タイでも毎回これ。ダチョウ倶楽部なのか?

ゲートで待っていると、6時前くらいに朝日が差し込んできた。ウズベキスタン航空の機体は緑・青・白の国旗カラー。わたしは各国を代表するような正統派?な航空会社が作る案内ビデオが大好きで、今回も期待していた。結果は大正解。伝統衣装を着た一団がラクダに乗って砂漠を渡る、シルクロード感満載の映像に心が躍った。機窓からはタシュケントの市街地、砂漠、干からびかけた川、また砂漠、そして耕作地帯と景色がどんどん変わっていく。

タシュケントからヒヴァの最寄り空港、ウルゲンチまでは約1時間半。距離感でいうと、東京から広島くらい?ウルゲンチからさらにヒヴァまで移動しないといけないから、例えるなら「東京に降り立った外国人観光客が、熊野古道を目指す」みたいな感じのチャレンジングさかもしれない。出雲大社を目指す感じでもいいかも。まあ、ツアーでなく行くにはアクセスのハードルはかなり高い。

ウルゲンチ空港に降り立った瞬間、びっくりした。気温が13度しかない。風も強くて体感温度はさらに低い。こんなこともあろうかと、日本を出発する直前にスーツケースに突っ込んだ長袖を持ってきて正解だった。空港の外にはたくさんのタクシーの客引きがいたけど、全部断った。せっかくなら自力で公共交通機関に乗ってみたかった。あらかじめ誰かのブログで読んでいた「3番バス」が止まりそうな場所まで歩いて行く。しかし、そこには何の標識もない。

本当にバスが来るのか…?と半信半疑で待っていたら、無情にもバスが自分を追い越して行ってしまった。乗りますアピールが足りなかった。悔しい…。でも、めげずに待っていたら、10分後くらいにまた次のバスが来た。さっきよりも大きい車体だった。今度は手のひらを下にしてヒラヒラさせる、いかにも「乗りたいです」というサインを出すと、バスが止まってくれた。もしかしたらちょうど降りる人がいたから止まっただけかもしれないけど、結果オーライだ。

地元のバスを使いこなすって、観光客にはいち高いハードルだと思う。日本ですら路線バスなんかは難しくてよくわからない。地域ごとにルールも違うし。でもだからこそ、それに成功したときの達成感はひとしおだ。これぞバックパッカー魂というやつだと思う。

バスは、見た目どおりかなり古かった。ガタガタと音を立てながら、ゆっくりと進んでいく。道は片側3車線くらいの広々とした幹線道路で、両脇には相変わらず何もない荒涼とした景色か住宅地が広がっている。地方空港のまわりって、日本も含めてだいたいこんな感じだよなあと思う。ウズベキスタンは右側通行。運転マナーは荒いわけではないけれど、クラクションはかなり頻繁に使う。日本では「クラクション=怒っている」という印象だけど、ここでは「ちょっといるよ!」くらいの軽いノリでピッピッと鳴らしている。そんな空気感も、なんだか旅の味わいの一部になっていた。

バスの料金はたった2000スムだった。30円ぐらい。

さてデフコンバザールという3番バスの終点で降りた。想像していたよりもずっと大きな市場で、エリアごとに役割が分かれている。ここは羊肉のエリア、あそこはチキン、あっちは粉もののお菓子ゾーン、といった具合。朝の時間帯だったからか、惣菜パンのような軽食系が多く並んでいた。本当はお肉の串焼きが食べたかったけど、まだどの屋台も焼き始めたばかりで、香ばしい匂いだけが漂っていた。ヒヴァ名物の緑色の麺料理にも挑戦したかったのに、そちらも「まだ準備中」な雰囲気でお預け。どちらも食べられなかったのは残念だったけど、それもまた旅のタイミングというやつだ。ヒヴァで食べよう。

さて、このデフコンバザールからヒヴァの街に向かう手段として、ちょっと変わった公共交通機関がある。それがトロリーバス。電線から電気を受け取って走る、あの古き良き乗り物だ。しかも、このトロリーバスが、街と街を結ぶ長距離路線として現役で走っているというのだから驚く。ウズベキスタンでも、こうして残っているのはこの地域くらいだそう。そう聞いたら、もう乗らない理由はない。

…わたし、やっぱり乗り物オタクなのかもしれない。鉄道旅もこの旅の大きな楽しみのひとつだけど、こういう「その土地ならではの珍しい乗り物」には特別な魅力を感じてしまう。幸い、今回は時間もたっぷりある。焦らず、寄り道も楽しみながら、行けるところまで自分の足で行ってみる。こういう自由さが、ひとり旅の醍醐味だと思う。

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THE EVERGREEN HOSTELのオーナー・はづきです。 The owner of THE EVERGREEN HOSTEL.Thank you for reading our blog.