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このホステルができるまで9

このホステルができるまで9

こんにちは。THE EVERGREEN HOSTEL・オーナーのはづきです。当時書き溜めていたものをベースに、このホステルができるまでを書いています。

 

■2015/10/5 -A物件、ダメになる!
昨日JFC(日本政策金融公庫)に初めて相談に行ったわけだが、その時持っていった資料のベースとなる候補物件Aが大家さんの意向で貸せなくなってしまった。資料を作りこんだ直後に判明した。NGなのは理解しつつ、収支も試算してしまっていたし、他に不動産のアテもなかったのでとりあえずはA物件をベースにして所感を聞きに伺ったのだ。

 

どうしてA物件はあんなに保留しておいたのに急にダメと言われたのか。一言でいうと、「オーナーが心変わりした」 ということになる。このへんはまた別の機会に書きたいところ。N部長は「ここまでの2か月を無駄にしてしまって本当にすまん」と言ってくれたが、貴重なケーススタディだったと思う。ちなみにこの時点でも私以外の人がそのテナントを検討しているわけではないらしかった。く、くやしい…

 

さて。なんとN部長はすぐにB物件を紹介してくれた。こういうところで私はN部長と知り合えたことがどう考えてもキーポイントだったなと思う。
こんなことを書くとまるでもう物件を取り押さえたような言い方だが、いまのところ何もかも未決です
どう考えてもここまでいろいろ動いて候補を挙げ続けてくれるN部長(の会社)に申込をしたいし、お金を払いたいし、その後もうまくやっていきたいものだ。

紆余曲折はあったものの、このとき紹介してもらったB物件がTHE EVERGREEN HOSTELになった。

■2015/10/6 -物件選定のむずかしさ!
N部長に電話をした。「先日のB物件についても自分はかなりいいと思ってるのですが、進捗どうですか」的な。N部長はめずらしく声が小さ目で、若干曇ったように聞こえた。

 

いま検討してるビル(B物件はこのうちの1フロア)はうちがテナントや入居者の仲介をしているだけでなく、管理も行ってる物件じゃけえ、あの業態を役員がNGにすることもありうる。ちょうど他の物件でこないだ問題になっとって…ちょっとわしの方で作戦考えるからちょっと保留じゃ。」

 

ゲストハウスという業態はなかなか難しい。これには法律的な側面と、大家さんの戦略的・心情的な側面の問題がある。もしかしたらゲストハウスをOPENしたくてこの記事を読んでくださっている人もいるかもしれないので、なるべく丁寧に書こうと思う。

 

むずかしさ①法律的な側面

面積にもよるが、宿泊施設の改装でもない限りは「用途変更」が必要。その手続きが必要になるかどうかの基準が100平米(≒33坪)
しかし自治体のご担当者によっても「100㎡よりも小さいが変更必要」と判断されるケースもあるらしい。
参考: http://create-guesthouse.com/guesthouse-100m2/

実際に私が東京で飲食店の開発をしていたとき、かなり厳格な解釈をする担当者だったため開発担当全員が「これは本当に工事できるんだろうか」とやきもきさせられた案件があったことを思い出した。そのとき私は「法律や規則が決まっているのに、実際の運用はアナログ=人力なんだよなぁ」と
不思議な気持ちになったものである。

 

■「用途変更」
これは自治体の建築課とのやり取りであり、準拠法は建築基準法と関連するもの。
■ポイント
もしも「用途変更が必要ですね」となった場合には、最も大事なポイントは既存建物の検査済み証があるか、図面が揃っているか、というような…要するに「現状がどれぐらい把握しやすい状況か」がポイントとなる。ものすごい古いビルであれば、はたまたテキトーな大家さんなら、書類が揃わないこともある。絶望的らしい。こんなときは、さっさと違う物件を検討したほうがいいようだ。
■既存不適格遡及の対象
用途変更は、(一部を除いて)確認申請や既存不適格遡及の対象。既存不適格 というのは「建てられた当時の法令に沿っていても、いまの法律だとダメ」な状態のこと。既存不適格部分のある建築物は、たとえ小規模な用途変更でも建物全体についてその是正工事が必要となる可能性もある。というのも、変更するフロアだけの図面ではなく建物全部の図面をもっていかないとそもそも申請ができないことになっている。

いずれきちんと図面を揃えて建築課に確認するにしろ、行政協議の前にオーナー様にビルの現状がどうなっているのかを伺いなさいと建築士の友人に言われる。要するに、なんの作戦もなしに建築課に持って行ってしまったら、めくるめくパンドラの箱を開けてしまうことがあるということなのだ。万が一そこで既存不適格を指摘されるだけされて、その後ホステルとして賃貸契約に結び付かなかったなんてことになったら、オーナーさんに余計な手間と費用が発生するだけで、なにも残らない。どちらもホステルがテナントとして入居しようとしなければ(用途変更をしようとしなければ)、発生しなかったものである。

もちろん用途変更に際して発生しうる是正工事の費用負担は大家さんとの要交渉事項になる。自分が負担する意思はもちろんある。自分がテナントとして入居するための必要経費だ。が、万が一既存不適格部分が多くて、工事費が膨大になった場合にはとても個人が負担できるボリュームではなくなってくるだろう。

ゴチャゴチャ書きすぎてよくわからなくなってしまったのだが、要するに建物の現状把握のしやすさがとても大事ということ。わたしが先生だったら、ここだけはテストに出したい。

■検討中のB物件はどうなのか?
B物件は1991年7月の竣工のビル。比較的新しい。ただ、実際に既存不適格部分の有無はどのようになっているかこの辺を知るためにはどうしたらいいの.. と素人の私は途方に暮れた。まったくわからぬ。これはN部長にも問い合わせた。
「不適格部分は、正直わからん。竣工以降で大掛かりな工事はしてないので大丈夫だと思うんじゃけど..しかも3階から上は全部住宅だし…」
引き続き良くわからん。この件はちょっと保留。というかいずれ知り合えるであろう設計のプロにお任せする問題としたい。

むずかしさ②大家さんの心情的な問題

自分が大家さんだったら、どうだろうか。
もしホステル・ゲストハウスなんか聞いたこともなかったら。
そもそもホステルってなんじゃ?え?宿?
自分がよくわからない業態に自分の持ちビルを貸すのは
・・・確かになんだかちょっと、不安だ。

自分が大家さんだったら、どうだろうか。
毎日、不特定多数が自分の持ちビルをうろうろ出入りする。
綺麗に使ってくれるだろうか。
ものを壊したりしないだろうか。
マナーは大丈夫だろうか。
・・・確かになんだかちょっと、不安だ。

自分が大家さんだったら、どうだろうか。
しかも、もし英語が苦手だったら、外国人のお客さんというだけで拒否反応があるかもしれない。
自分ではうまくコミュニケーション取れないし。
・・・確かになんだかちょっと、不安だ。
心情的な問題 というのは要するに、こういう諸々の気持ちのこと。
まさにこういう理由で、先日の物件Aはダメになったのだった。
不動産屋さんは、取扱い物件自体は多数抱えている。でもこういう業種をOKしてくれる大家さんは極めて少ない。本当に、ものすごく少ない。N部長がそのへんをフィルタリングしてくれており、大変ありがたい。

 

この「なんだかちょっと不安」という心情的な問題は借主であるこちらの努力で可能な限り払拭するべき問題でありきっとこれからの課題になるのだと思う。(もちろん説明すれば何でも分かってもらえるということもないと思う。「心情」というのはそういう次元とは別だったりするし)…早くこういうお悩みフェーズに移行したいものである。いまはまだ、検討物件の条件がこちら側の想定に見合うかどうかの入り口だ。

Author

THE EVERGREEN HOSTELのオーナー・はづきです。 The owner of THE EVERGREEN HOSTEL.Thank you for reading our blog.